私の名は、耕一。
私の一族は、ポルトガルの由緒正しい貴族だったが、
今では、すっかり没落して、ここリスボンの町で、
細々と貿易商を営んでいる。
我がポルトガルは、この100年の間、幾多の冒険によって
次々と新航路を開拓し富を蓄えて来た。
その中で我が一族のみが、繁栄から取り残されてしまった。
クリス王女・・・
私は、パレードの喧騒の中、その美しい姿を見て以来、
すっかり、心を奪われていた。
だが、王女はいずれイスパニアより婿を迎えるのだという。
現在の私には、ポルトガルの王位継承者の王女に、
思いを伝えるすべすらないのだ。
私の相棒、老航海士。
1年前、私の父は彼を初め屈強の水夫と共に、
一族最高の夢を抱いて、遠くインドへと旅立った。
しかし、財宝を満載し祖国へ帰る途中、
猛烈な暴風雨が、父の船を飲み込んだのである。
父の死に途方に暮れる私に、
一行でただ一人生き残った老航海士が、
涙ながらに、父の最後に残した言葉を伝えた。
「夢を追え、希望を捨てるな」
父の無念を晴らすべく、私は航海の準備にかかった。
わずかな資金で水夫を集め、
中古船「ノーチラス」号を買った。
老航海士の助けがあるものの、
暫くは近海の交易で稼ぐしかないだろう。
しかし、我々の前途には、7つの海が広がっているのだ。
その先には、アフリカが、インドが、
そして遥かな新天地アメリカが待っている。
希望を胸に、老航海士と私は、
リスボンの町中へと繰り出した・・・。
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